「ツァラトゥストラ」における「没落」とは

また思い出したかのようにツァラトゥストラを読んでいますが、しょっちゅう出てくる「没落」という単語が、どうしても既存の意味から脱することが出来なくて困ってます。一旦ここに手塚富雄の註を書いておこうかしら:

高きから低きへ下りることであり、通常はマイナスの意味だが、ツァラトゥストラにとっては、人間の世界へくだって行って、自分をかえりみず、惜しみなく自分を与えつくすという意味をももっている。
ニーチェ 著・手塚富雄 訳「ツァラトゥストラ」中公クラシック P6)

独語の原著では"untergehen"とか"Untergang"とか書かれている「没落」ですが、この単語は元々は"unter"+"gehen"で出来ていて、それぞれ英語では"under"と"go"に相当する単語です。「下に行く」が元々の単語の意味なんですね。それを踏まえていると、この本の最初を読んでいる人なら一層、この「下に行く」―「没落」の意味が理解できると思いますよ。