円の接線の関数を求める際の注意事項(2元1次方程式と2元2次方程式の連立方程式)

3年半ほど、バイトとして個別指導の塾講師をやっているのですが、今日は1対1だったので一緒に同じ数学の問題を解いていたんですね。その中で、円の外部の点から接線を引く問題がありまして、それを解いていましたら、あれ、なんか答えが合わないなぁというので、色々いじってたら今更ながら注意事項に気がついてしまいました、ということで、それを解説しようかなと。
 C: \left( x+3 \right) ^2 + y^2 = 40に、外部の点 A(9,4)から接線を引く。この手の定石は、接点 P(p,q)を考えます。一般的に次の公式が成り立つ:

 \left( x-a \right) ^2 + \left( y-b \right) ^2 = r^2の円周上の点 T(s,t)を接点とする接線の方程式は、 \left( s-a \right) \left( x-a \right) + \left( t-b \right) \left( y-b \right) = r^2で与えられる。

というわけで、これに当てはめると接線の方程式は、

 \left( p+3 \right) \left( x+3 \right) + qy = 40

これが点 A(9,4)を通るので、
 \left( p+3 \right) \left( 9+3 \right) + q \cdot 4 = 40 \quad \Longleftrightarrow \quad 3p+q=1…(1)

となる。また、点 A(9,4)は円 C: \left( x+3 \right) ^2 + y^2 = 40の円周上の点なので、次の式も成り立つ:
 \left( p+3 \right) ^2 + q^2 = 40…(2)

さて、この2式(1)(2)を連立しよう。(1)式を q=1-3pと変形して(2)に代入すると、
 \left( p+3 \right) ^2 + \left( 1-3p \right)^2 = 40
 p^2 +6p +9 + 1 -6p +9p^2 = 40
 p^2 = 3
 p = \pm \sqrt{3}

この式を(2)に代入して、
 \left( \pm \sqrt{3} +3 \right) ^2 + q^2 = 40
 3 \pm 6 \sqrt{3} +9 +q^2 = 40
 q^2 = 28 \mp 6 \sqrt{3}
 q^2 = 27 \mp 2 \cdot 3 \sqrt{3} \cdot 1 + 1
 q^2 = \left( 3 \sqrt{3} \mp 1 \right)^2
 q = 3 \sqrt{3} \mp 1

よって、答えとなる接線は2本あり、それぞれの方程式は、
 \left( \pm \sqrt{3} + 3 \right) \left( x+3 \right) + \left( 3 \sqrt{3} \mp 1 \right) y = 40
 \left( \pm \sqrt{3} + 3 \right) x \pm 3 \sqrt{3} +9 + \left( 3 \sqrt{3} \mp 1 \right) y = 40
 \left( \pm \sqrt{3} + 3 \right) x + \left( 3 \sqrt{3} \mp 1 \right) y - 31 \pm 3 \sqrt{3} = 0

…となったが、実はこの2式、この問題の正しい答えではない。
実際にこの式に通るはずの点 A(9,4)を代入してみると、成り立たないことがわかる。
それは何故か、直接の原因は p = \pm \sqrt{#3}の値を(2)に代入したときの最後の式に問題がある。
 q^2 = \left( 3 \sqrt{3} \mp 1 \right)^2
 q = 3 \sqrt{3} \mp 1

これが嘘なのだ。もう少し、何が嘘なのかを正確に言うと、
 q^2 = \left( 3 \sqrt{3} \mp 1 \right)^2 \quad \Longleftrightarrow \quad q = 3 \sqrt{3} \mp 1

この矢印は、実際は
 q^2 = \left( 3 \sqrt{3} \mp 1 \right)^2 \quad \Longleftarrow \quad q = 3 \sqrt{3} \mp 1

しか成り立たない。これを両矢印で成り立たせるためには、
 q^2 = \left( 3 \sqrt{3} \mp 1 \right)^2 \quad \Longleftrightarrow q = \quad \pm \left( 3 \sqrt{3} \mp 1 \right)

としなければならない。
つまり、求める qの値は
 q = 3 \sqrt{3} - 1 , \quad 3 \sqrt{3} + 1 , \quad -3 sqrt{3} + 1 , \quad -3 sqrt{3} - 1

の4つである。
さて、ではこの4つの解は一体何を意味しているのだろうか。それにはまず、連立された2式の解析幾何的な意味を考える必要がある。

fig.1は y=x-1 y= - \frac12 x + 2のグラフである。この2本のグラフの交点を求めるときは、多くの人は連立方程式を立てそれを解くであろう(華麗に2*2行列で解く人いたらごめんなさい)、こんな風に yを消去して:
 x-1 = - \frac12 x + 2
 2x - 2 = -x + 4
 3x = 6
 x = 2

と、 xの値を求め、これを2式のどちらかに代入して
 y = 1

を求めるのが定石だ。
先程は1次関数同士の交点を求めた。では次に1次関数と2次関数の交点を求める。

fig.2は y = (x-1)^2-1 y = -x +2のグラフである。
基本的にはこれも先程と同様に yを消去して
 (x-1)^2-1 = -x+2
 x^2 -2x +1 -1 = -x +2
 x^2 -x -2 =0
 (x-2)(x+1) =0
 x = 2 , \quad -1

これをいずれかの式に代入して
 (x, y) = (2, 0), \quad (-1, 3)

を得る。もう少し具体的に数式を並べてみれば、 yを消去してできた x2次方程式を解いて得られた値を、 y = -x +2に代入すれば
 x=2のとき:
 y = -2 +2
 y = 0

 x=-1のとき:
 y = -(-1) +2
 y = 3

となる。一方で y = (x-1)^2-1に代入すると
 x=2のとき:
 y = (2-1)^2-1
 y = 0

 x=-1のとき:
 y = (-1-1)^2-1
 y = 3

となり、先ほどと同様の結果になる。
非常に当たり前…のように思うが実はそうでもない。その証拠に、先程は yを消去することから始めた解答を、 xを消去して別解を作ってみよう。別にどちらの文字を消去するかは解答者の勝手である。あえて消すのが難しそうな方を選んだって、解けなくは無いはずだ。
 y = -x +2を変形し x = -y +2とし、 y = (x-1)^2-1に代入する。
 y = (-y +2 -1)^2-1
 y = y^2 -2y +1 -1
 y^2 -3y = 0
 y (y -3) = 0
 y = 3 , \quad 0

さて yの値が求められたので、これを使って xの値も求めてしまおう。 y = -x +2、もとい x = -y +2に代入すると、
 y=3のとき:
 x = -3 +2
 x = -1

 y=0のとき:
 x = 0 + 2
 x = 2

となり、 yを消去していくことで得られた解と同じ
 (x, y) = (2, 0), \quad (-1, 3)

を得られた。
では、今度は得られた y y = (x-1)^2-1に代入することによって解を求めてみよう。
 y=3のとき:
 3 = (x-1)^2-1
 3 = x^2 -2x +1 -1
 x^2 -2x -3 - 0
 (x-3)(x+1) = 0
 x = 3 , \quad -1

 y=0のとき:
 0 = (x-1)^2-1
 x^2 -2x +1 -1 = 0
 x^2 -2x = 0
 x (x-2) = 0
 x = 2 , \quad 0

となり、1つの yの値から2つの xの値が出てきてしまい、合計で4つの解
 (x, y) = (2, 0), \quad (-1, 3) , \quad (0, 0), \quad (3, 3)


が得られたことになった。fig.2を見れば明らかであるが、後半の2つの解はこの問題の解としては相応しくない。ではなぜこれらの解が出てきてしまったのか。
fig.2-1は y = -x +2のグラフと x = 2および x = -1を示したものである。交点はそれぞれ (2, 0) (-1, 3)となるが、つまりこのグラフは、 y = -x +2 x = 2, \quad -1を代入して yを求めている過程を示していると言える。
同様に、fig.2-2は y = (x-1)^2-1 x = 2, \quad -1を代入して yを求めている過程、fig2-3は y = -x +2 y = 3, \quad 0を代入して xを求めている過程をそれぞれ示していることになる。





さて、では問題の y = (x-1)^2-1 y = 3, \quad 0を代入して xを求めている過程である。fig.2-4がそれを示すグラフである。これを見ると、 y = (x-1)^2-1 y = 3および y = 0との交点が2つずつ、合計4つあることが分かり、この交点が正に、不適当な2解を含んだ4つの解
 (x, y) = (2, 0), \quad (-1, 3) , \quad (0, 0), \quad (3, 3)

を示している。これが、不適当な解が出てきてしまった原因である。すなわち、その yを満たす xが2つある2次関数に得られた yの解を代入してしまったために、連立方程式の解―グラフ上では2つのグラフの交点―ではないものも同時に求めてしまったのだ。

この記事の最初の問題に戻る。円の接線の関数を求める問題だ。
 q = 3 \sqrt{3} - 1 , \quad 3 \sqrt{3} + 1 , \quad -3 sqrt{3} + 1 , \quad -3 sqrt{3} - 1

この4つの解の意味について、もう細かく説明する必要はないだろう。問題のグラフはfig.3の通りである。オレンジの線が、 p = \pm \sqrt{3}を示している。この2本の線と円との交点4点が、先程の4つの解を示しているのだ。このうち2つの解は見てわかるように題意を満たしていない。この2つを含んだ4つの解があるなかで、更に \alpha ^2 = \beta ^2 \Longleftrightarrow \alpha = \betaという間違いを犯したことにより、間違った2点を選んでしまったのだ。
ではこの間違いを防ぐにはどうすればよかったのか。理論的には、4つの解についてそれぞれ2つの方程式を満たすかどうかを確かめれば良い(つまり、4つの解を 3p+q=1 \left( p+3 \right) ^2 + q^2 = 40に代入し、満たすかどうかを確かめる)のだが、もっと手っ取り早い方法がある。それは、 p = \pm \sqrt{3}を一次関数 3p+q=1に代入して qの値を求めようとすれば良い。そうすれば、交点は正しい2点しか出てこないからだ。このように、2次以上の連立方程式を解く際には、単純に代入して得られた解が本当に求めたい解なのか、そしてほしい解を得るためにはどちらの式に入れれば良いのかというのを考えながら解く必要がある。このときに、私が描いたようなグラフが解答作成の一助になれば幸いである。