3 各変化 不定法句 後接辞 -ne, -que 疑問代名詞 quis, quem, quid 未完了過去 前置詞1(中山恒夫「ラテン語練習問題集」白水社)
本当はこの範囲は8日に学習していたんですけど、如何せん2章の記事が書き終わらない書き終わらない。今現在実は6章まで学習済みなんですよ、でも記事はやっと3章。
各変化は5章で地格以外の格はまとめられているのでそちらに譲ります。
不定法句は、独語をやっていると別になんとも思わないですけどね。英語ですと一応「原形不定詞」がこれに相当するんですかね。私は英語のto不定詞、独語のzu不定詞の成り立ちを知らないので何とも言えないのですけど、少なくとも言えることは、英語の原形不定詞については、「知覚動詞のときはtoが省略される」というのは結果的にそうなのであって、この文法はそうやって出来たわけではないということです。
後接辞って初めて聞きます。wikipediaさんに問い合わせてみたところ、どうやら「接尾語」とは別物で「接語」という考え方があって、この-neや-queは後者に相当するっぽいです。詳しくは「接語 - Wikipedia」(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8E%A5%E8%AA%9E)をどうぞ。まぁしかし、-queの方はetがあるからいいじゃないか、なんだこれは、という感覚しか持たないのですが、-neで決定疑問文が作れるというのが、便利っちゃあ便利ですよね。聞きたい単語を文頭に持ってきて-neを付ければいいだけですから。文頭に持ってくる単語は動詞の他にも名詞がOKですからね、教科書の例文を見るとなるほどと思います。すると思うのですが、現代英語において、"Puellane cantat?"と同じ意味の決定疑問文って書けるんですかね、音声学的な強調をなしにして。ちょっと疑問です。
「未完了」という文法用語がいまいちしっくり来ませんねぇ。暫定的な理解としては、「完了ではない→未完了」という感じでいます、「未完了」というより「非完了」ですね。どうもこの「未完了」はロマンス語派には引き継がれているらしく、「半過去」とか「線過去」とか言ったりしているそうですよ。時制と相については、あとでどこかでまとめようと思います。
前置詞については、独語をやっていますから2種類の格がくっつくことについては何とも思いませんね。むしろ独語をやっててよかったと思うのは、羅語における前置詞とセットになる格が対格か奪格というのと、独語におけるそれが対格が与格であるというのがうまい具合に対応しているので、覚えることが1つ減ったということですね。一応補足解説いたしますと、ドイツ語でも前置詞の後ろ付く格は2つ(本当は3種類あるんですけど)で、対格(独語文法では4格)と与格(3格)なんですけど、これは前置詞の種類によってどちらかしか取れない前置詞や、どちらも取れるが意味が変わる前置詞というのがあるんですね。で、このルールがそのままラテン語にも適用できるというのがまず嬉しいのですが、それだけでなく、意味が同じ前置詞ならその後ろに付く名詞の格も大体一致しているというのが、更に覚えることが減ってラッキーというところです。一例を挙げますと:
意味 | ラテン語 | 支配格 | ドイツ語 | 支配格 |
---|---|---|---|---|
を通って | per | 対格 | durch | 対格 |
に対して | contrā | 対格 | gegen | 対格 |
から | dē | 奪格 | von | 与格 |
と | cum | 奪格 | mit | 与格 |
の中へ | in | 対格 | in | 対格 |
の中で | in | 奪格 | in | 与格 |
全部調べてないので、これが全ての前置詞に当てはまるかどうかは分かりませんが、そうだとしたら随分楽になりますし、今の段階でも、少なくともそういう傾向があるということだけでも知れると大変助かりますね。因みに、ラテン語の与格については次章で扱いますが、これがほとんど奪格と同じ形というのがなお興味深いですよね。5章の一覧表を見ると一目瞭然です。これを見ると「あぁ、ラテン語の奪格はドイツ語では与格に吸収されたんだな」というのが何となくわかります。
さて、じゃぁ単語です。これはいつ終わるのかしらね:
iūstus
英語のjusticeまんまです、「正しい」「公正な」という意味の形容詞。「判定する」のjudge、「正しく」「丁度」という意味のjustもこの単語を親としていますね。「先入観」という意味のprejudiceや「傷害」のinjuryもこの単語を含んでいます。「先に(pre)判断する(judge)」で「先入観」、「正しく(jur)ない(in)状態にする(y)」で「傷害」だと。しかし後者はなんか随分な解釈ですね、でも英語に入ってきたときの意味はこの「傷害」という意味で、その後に「不正行為」というまさにin-justiceな意味がついたそうですよ。因みに英語ではもう廃義ですけど、「無礼な発言」という意味もかつてあったそうですよ、仏語のinjureは専らこの意味しか持っていないようです。
hortus
「庭」という意味の名詞です。英語ですとgardenやyardが出てきますが、どうもこれらは全て1つの印欧祖語*ghordho-に収斂するようですよ。/g/の音がそのまま残ったのがgardenに、ゲルマン祖語で/g/の音が/dʒ/に変わった(古英語ではġとドットを打つことがある)上に/j/の音に変化したのがyard、そして、頭音のgが落ちて2番目のhが生き残ったのがこのhortusという単語だそうです。
silva
「森」。英語にはsylvanという単語で残ってますが、これの意味が「森の妖精」って…いや、何でもないですけど。男子名であるSilvester(=Sylvester)にはこのsilvが含まれていますね、さながら「茂雄」あたりですかね、邦訳いたしますと。
quem
「誰を」、独語で言うとwenですね、英語では関係代名詞でくらいしか最近は使われませんがwhomです。独語をやってる人は気をつけなくてはいけないのですが、ラテン語の対格は得てして語尾が-mで終わっています。これにつられて独語の-mで終わってる言葉と対応させてしまうことがよく起こりますが、ドイツ語の-mは与格ですからね、対格は-nですからご注意ください。そういえば英語はwhomですから、英語では-mが保存されたんですかね。…と思ったら語源辞典曰く、中英語の時点で与格でwhom、対格で(h)wanがあって、whomが(h)wanを吸収したとありますね、なんだ、中英語の格の語尾は現代のドイツ語とおんなじだったのね。
Aemilius
「アエミリウス」というと、第二次ポエニ戦争で戦死したローマの政治家・将軍でるルキウス・アエミリウス・パウルス(Lucius Aemilius Paullus)ですかね。私は共和制ローマの知識はまるでないので(このサイトに書いてある共和制ローマに関する知識は全てネット上の情報ですよ)、googleで「アエミリウス」とググッた結果トップに出てきたのがこの人だったというだけです。
interrogō
「質問する」という意味の動詞です。そんなにメジャーじゃありませんが、英語にも「尋問する」という意味でinterrogateという動詞があります。「?」のことを一般的には「クエスチョンマーク(question mark)」って言ったりしますが(一般的には「はてなマーク」ですかね?)、「インテロゲーションマーク(interrogation mark)」って言うこともなくはないそうです。因みに世の中には‽っていう記号がありまして、これのことをinterrobang(インテロバング、日本語では「感嘆修辞疑問符」)と呼びます。インテロバングは日本ではあんまり見ませんよね、「!?(感嘆符疑問符)」や「?!(疑問符感嘆符)」は比較的見ますけど。あ、言っておきますが、この「!?」と「?!」は意味が違いますからね、これを著作『蟹工船』で多用していた小林多喜二はちゃんと使い分けていたそうですが。簡単に説明すると、「えっ!」→「どういうこと?」という場面では「!?」を、「は?」→「なんだって!」という場面では「?!」を使います。一応私はこの違いによって使い分けていますよ。
medicus
「医者」です。英語ではdoctorですけど、これは元々先生を示す言葉だったのが、意味が変化して「医者」を指すようになったそうです。doctorには「博士」という意味もありますが、それはそのあとに付加されたものだそうです。
cūrō
英語のcureにそっくりですな、「治療する」です。「心配する」「注意する」の意味である英語のcareの方は語源的には無関係なんですけど、派生語では互いに影響を受けていますね;日本語なんかもはや「治す」の意味で「ケア」って使っていたりしますし。「注意深い」「好奇心旺盛な」という意味のcuriousも、綴りはcureから、意味はcareから影響を受けています。
laudō
「褒める」「賞賛する」という動詞です。
avus
「祖父」のことです。「祖父」自体は英語ではgrand father、独語ではGroßvaterと「大きな父」と綴っていますが、「叔父」を意味するuncleは語源を辿るとこのavusに行き着きます。uncleは元々「母方の叔父(maternal uncle)」を表すavunculusという言葉が祖先ですが、このavunculusは元は「小さなおじいさん」という意味なんですね。この語中の"cul"に「小さな」という意味があり、英単語にも"cule"や"cle"と形を変えて接尾語として生きています。例えばmolecule「分子」やcuticle「表皮」「角質」なんかはそうです。因みに「父方の叔父(paternal uncle)」を表す単語は古英語にfæderaという単語があったのですが、uncleによって消されたんでしょうね。しかしWiktionary便利だなぁ、場合によっては手元の資料より詳しく載っていたりするから悔しい。
narrō
「話をする」という動詞です、英語のnarration(ナレーション)はここから来ていますよ。
fābula
「話」「物語」です。英語のfableにそのまま形を残していますね。ただこちらはただの話ではなく、「寓話」とか「つくり話」とか「伝説」とか、そういう普通ではない話しか指さなくなってしまいましたが。
apportō
「持ってくる」「運んでくる」という動詞ですね。「運んで(portō)移動する(ap<-ad)」でこの意味になるんですね。英語ではbringですが、こちらはゲルマン系が生き残った例ですね、独語でもbringenですし。
rūsticus
「田舎の」という意味、転じて「農業の」という意味でもあるんですかね、教科書の例文を見るかぎりだと。英語にもrusticという形で同じ意味の形容詞が残っていますね。
videō
「見る」という動詞です。見たまんまですが、videoはこれが語源ですよ。"vid-"、"vis-"、"vic-"と様々な形の接頭語になって英語に影響を与えています。"view"、"vision"、"visit"などなど。これら以外にも、「(人の)方を(ad-)見る(vice)」で「忠告する」advice、「外から(e<-ex)見える(vident)」で「明白な」evident、「上から(sur)見る(vey)」で「見渡す」「調査する」surveyなどなどがあります。
flōreō
「花盛りである」「繁栄している」という自動詞。
dēbeō
「〜しなくてはならない」「〜を負っている」という他動詞ですが、多分助動詞的な役割も出来るんだと思います、英語のmustあたりかな。後者の意味を見ると、これは英語のdebtと関係があるなということがわかると思います。このdebtのbが発音されないのは、古フランス語の時点でdetteとbの音が落ちていてそれが英語に入ってきたあとに、フランス語でラテン語化が起きてそれの影響を受けたそうですね。時は13〜16世紀、丁度ヨーロッパはフランスを中心に廻っていた時代、そしてルネサンスの真っ只中、そりゃぁ言語も原点回帰的になりますとも。
alius
「他の」という形容詞です。前章のetのところでも書いた気がしますが、"et al."の"al."はこれを女性変化させて人を表す名詞にした"alia"です。教科書の方は"et alia"ではなく"aliaque"と綴っていますが、この"et"と"-que"はニュアンスが違うんですかねぇ?ちょっと調べてみましたが、etより-queの方が接着力が強いらしい、というのくらいですが。因みに、英語に残っているのはotherではなく、「その他」を意味するelseが子孫です。
saccus
英語のsackと似ていますね、「袋」という意味です。どうやら本元は希語のsakkosらしいですけどね。
arēna
「運動場」という意味、英語のarena、言わずもがな日本語の「アリーナ」まんまですね。
intrō
「入る」という動詞。どうやら自動詞にも他動詞にもなるらしく、教科書の例文もarēnamと対格を取っているのがわかりますね。「紹介する」という意味のintroduct(これを短縮したのが「イントロ」です)や「内省する」のintrospectのように、そのまま接頭語になっています。勿論、enterもこの単語が元です。
nauta
「船乗り」という意味の名詞、-aで終わっていますがpoētaと同じ類で、男性名詞ですのでご注意です。「船」を表すnāvisと印欧祖語でつながっていますが、nāvisのお話はまた出てきた時にいたしましょう。
perīculum
「危険」という意味の名詞です。英語にはperilという形で残っていますが、そこまでよく使う単語ではないらしいえすよ。
impavidus
「恐れのない」「大胆な」という形容詞です。
terreō
英語のterrorですね、「怖がらせる」「脅かす」です。日本語でも「テロ」って言いますけど、これは英語のterrorから来たterroristやterrorismの略語ですよね。「恐るべき」のterribleもここからの派生です。
Corinthus
コリントスというギリシャの地名です。コリンティアコス湾とサロニカ湾に挟まれた地峡で運河が走っており、戦略的にも重要な土地だそうで、ギリシャ独立戦争後に一時期は首都をおこうという話もあったそうです。因みにこの運河が建設されたのは比較的最近の1869年で1893年に完成したそうです。
Rhodus
こちらもギリシャの島で、ロードス島です。この島にはロードス島の巨像というものがあったらしく、この島の街の一部も世界遺産になっているそうですよ。どうもギリシャの地名はラテン転写すると-usとなることが多いらしい。これが男性名詞と思わせるが、性は女性であると。
vīsitō
英語のvisitの語源です、「訪問する」です。さっきvideōのところでちょろっと成り立ちいいましたよね。
agricola
「農夫」です。このagri-が農業を意味しているのはいまさらですかね、agricultureとかはそうなんですけどね(まぁこの単語の場合は"culture"にも「耕す」っていう意味があるんですけど)。英語ではfarmerがメジャーな単語ですかね。因みにこのagricolaも男性名詞です。
benīgnus
「善意の」という形容詞です。"ben"の部分に「善」が隠れていますね。
doctus
「教養のある」という意味の形容詞です。medicusのところでちょっと出てきましたdoctorもそうでしたけど、元は「教える」という動詞doceōの派生です。十年前にあったブッシュ・ドクトリンの「ドクトリン」doctrineも意味は「教義」ですし、「文章」という意味のdocumentもdoceōの派生語であるdocumentumから来ています。
pius
「敬虔な」という形容詞、英語ではpietyという単語が相当します。「哀れな」「惨めな」という意味の形容詞pityも元々はこの単語から派生したもので、最初はpityに「慈悲深い」や「敬虔な」という意味もあったのだが、pietyという単語が生まれたためにこれらは廃義になったそうな。
libenter
「喜んで」という副詞です。英語にliefという古語があったのですけど、今ひとつ関係あるのかないのかよくわからなかった。しかしWiktionaryがリーサル・ウェポンになってるなぁ最近は。…あれ?「リーサル・ウェポン」って「最終兵器」って意味じゃないの?最終兵器はUltimate Weaponの方がいいですか、そうですか。
nūntius
「使者」とか「知らせ」とかいう意味の名詞。newsの語源かと思いきや、こちらは原義が「新規な事物」でnewと語源が同じなんですね、newの語源はnoves、やりましたね。
pateō
「開いている」「広がっている」という自動詞です。英語ではゲルマン系のopenに取って代わられていますが、意外にも「特許」という意味のpatentにこの単語の血が受け継がれています。羅語の時点で「特許」という意味の単語patentemが出来ていたそうです。詳しくは分からんですけど、どうやら専売特許を得るときにその旨を書いた公文書をopen letterと呼んでいたそうで、そこから来ているっぽいですよ。「Letters patent - Wikipedia」(http://en.wikipedia.org/wiki/Letters_patent)に色々書いてありますが、如何せんこのレベルの英語もスラスラ読めないなんて、俺は本当に大学生ですかえ…?しかしシェークスピアの『夏の夜の夢』1.1.80の"yield my virgin patent up"はまぁなんというか、特許証といえばわからなくはないですけど、と感じるところではある。なんというか、処女信仰って恐ろしいな。
mūrus
「壁」という意味の名詞。独語がMauerですから多分この単語が起源なんでしょう。
tūtus
「安全な」「しっかりした」という形容詞です。
incola
「住民」という名詞ですね。この後半のcolaには「住む」という意味が含まれていますねん。「植民地」という意味のcolonyを引くと、例えば天才さんなんかは「耕作する人」が原義とか書いていますから、culに通じているということがわかると思います。じゃぁ「耕す」であって「住む」じゃないじゃないかということになるのですが、このculの元を辿ると、羅語のcolōに辿り着きます。このcolōには「耕す」「開墾する」「住み着く」という意味がありまして、つまり、耕すことと住むことはおんなじだったのですね。よく考えたら人間だってもとは狩猟して食べ物を手に入れていたわけです。獲物を求めて住処を変えていたわけですから、定住なんてしてなかったんですね。それが農耕ということを習得して、獲物を追う必要がなくなった。すると同じ場所に定住することになったわけです。この「農耕と定住は表裏の関係」というのを考えると、成程colōに「耕す」と「住む」の2つの意味がある理由がわかりますね。…なんか自分ですごい発見をしてしまったような感覚に陥っていますが、件の語源辞典に堂々とcolere to cultivate, dwellって書いてありますから、全然新発見じゃありませんよね。こんなの比較言語学の黎明期にとっくに欧米人に見つけられてるな。
ōrnō
「飾る」という動詞です。英語のornamentはここから来てますね。
dēlectō
「喜ばせる」「楽しませる」という動詞。英語のdelightが直系の子孫ですね。これの直系ではありませんが、近いところに「美味しい」deliciousがあります。因みにこのdelightという単語、フランス語経由で入ってきた典型的なロマンス語派単語なんですが、古フランス語の時点でdelitierと、どこにもghの影がないんですね。この単語は中英語の時点ではdelitだったのですけど、その音の配列がlightやflightと近かったということで、ありもしなかったghの綴りが入ってしまったんです。こういうことは英語に限らず結構よくありますよ。
Ōceanus
「大洋」という名詞です、大文字から始まっていますから固有名詞ですね。ローマの勢力範囲を考えるに、大西洋のことを指しているんですかね?英語のoceanの語源ですね。
mīrus
「不思議な」という形容詞、英語のmiracleの語源はこの単語の派生語であるmiraculumですね。どうやら「驚く」という意味のmīrārīという動詞があるらしく、ここからこの単語は生まれているようです。この単語から生まれた単語は他にもあり、その末裔が英語に「驚嘆するような」marvelous、「蜃気楼」mirage、「鏡」mirrorなどです。「感嘆する」のadmireもそうですね。
doctrīna
「学問」という名詞。この"doc-"の説明はなんか3回目なような気がするのでここは割愛しますね。
litterae
「手紙」「文学」そこから更に「学問」という意味を持っているようです。女性複数名詞です。英語のletterおよびliteratureに通じていますね。しかし文学全般で「学問」って…まぁ理系学問はヨーロッパにおいては暗黒時代がありましたからねぇ。あれだけギリシャのphilosophīが色々考えてたのに、ルネサンスを迎えるまでヨーロッパ人は一体何をやってたのか。
dīvitiae
「富」を表す複数女性名詞。しかしこの諺は面白いなぁ、この考え方が日本の金持ちに足りないと思う:"Riches are like muck, which stink in a heap, but spread abroad make the earth fruitful."「富とは糞である、それは積んでおけば悪臭を放つ、しかし外に撒けば地面は豊かになる。」
vel
「あるいは」という意味の接語。英語のorに相当ですね。因みに羅語には同じ意味のautという接続詞もあって、こちらが英語のorや独語のoder、仏語のouの起源となっています。でもどうやらautの方が使う場面が多いらしい…が、今の段階では詳しくはわからんっ!
vīta
「生活」や「人生」「生命」を表す名詞です。これと、これの動詞形vīvōから、英語の接頭語"vit-"と"viv-"が生まれましたね。「生命の」vital、「いきいきした」vivid、あとは「復活する」というreviveや「生き残る」という意味のsurviveなんかもそうですね。「サバイバル」っていうのはこれの形容詞形survivalです。
nāvigō
「航海する」という動詞。nautaのところでちょろっと出てきましたね。英語のnavigateは勿論この単語から出来ています。最初はラテン語同様に「航海する」という意味でしたが、後に「操縦する」という意味も付け加わりましたね。「海軍」を意味するnavyもここから来ています。
caelum
「空」や「天気」を意味する名詞。ぱっと見て仏語の「空」cielだなとは思ったのですが、じゃぁ英語のskyってどこから来てるんだろう、独語はHimmelだしなぁ(因みにこのHimmelという単語には「天国」という意味もあります。キリスト教が入ってから定着した単語なんですかねぇ。もしくはゲルマン神話のときからそういう考えがあったのだろうか)。語源辞典曰く、最初は「雲」という意味だったのが、次第に「空」を指すようになったそうですよ。大分余談ですが、先程の仏語cielはL'Arc~en~Cielのcielですね、英訳すると"The arch in the sky"「空のアーチ」で「虹」を指します。もっと脇道に、路地裏に行ってみますと、「ラルク・アン・シエル事件」というのがあってですね…おっと、こんなところに行方不明だったクラスメイトが。
altus
「高い」とか「深い」とかいう意味の形容詞です。英語ではhighおよびdeepですが、独語ではそれぞれhochおよびtiefですから、英語ではゲルマン系が残ったのがわかりますね。仏語ではhautおよびprofondですが、このうち前者のhautがaltusの子孫です。このhautというのが、英語の「高める」という意味の動詞enhanceの後半に隠れていますね。羅語の方も「高度計」altimeterとかに影響を与えたりしていますよ。
spectō
「見る」という意味から、「目指す」「調べる」という意味までを持っています。これの派生語は多いですね、総整理には27単語も並んでいますよ。一例を挙げますと、「見物」spectacle、「スペクトル」spectrum、「密偵」spy、「様子」aspect、「調べる」inspect、「眺望」perspectiveあたりは察しがつく範囲ですかね。あとの有名どころは1つ1つ成り立ちを補足したほうがいいでしょう。外見から判断するところから「種類」species、この「種類」という意味から「個々の」という意味を経由したのが「特別な」special、specialと同じような経路で「特別な種類のもの」が「香辛料」spice、振り返って見るから「尊敬する」respect、下に見るから「軽蔑する」despise、何かを求めて外を見るから「期待する」expect、中を見るから「調べる」inspect、前を見ているから「予想する」prospect、疑って下から見るから「疑う」suspectとかね。
bellum
「戦争」を表す名詞です。英語には「好戦的な」bellicoseとか、「反逆する」rebelくらいですかね。rebelを名詞化したのがrebellion、カタカナで「リベリオン」ですね、まぁいろんなところで聞いたり聞かなかったりの単語。
Trōiānus
「トロイアの」という形容詞。教科書に書いてあるのは「トロイア戦争」のことですね。トロイア戦争はギリシャ神話上の戦争で、まぁ詳しくは各自ググッてください。ただ、この戦争の終盤に出てくる「トロイの木馬」は有名ですね。因みにホメロスによってトロイア戦争のことが書かれているのは「イリアス(Īlias)」と「オデュッセイア(Odyssea)」という作品です。
ubi
「どこに」「…のところに」という意味の副詞です。これを接続詞として使うと、「…すると」「…するや否や」という意味を持ちますね。00年代後半から流行りだした「ユビキタス」というのは元々ラテン語の「神はあまねく存在する」という意味のubiquitousから来ています。
quō
「どこへ」「…のところへ」という意味の副詞です。これは比較として使うと、「…すればするほど」「それだけ一層…」という意味になります。ubiとquōの違いは流石に大丈夫ですかな。
ambulō
「歩く」「行く」「散歩する」という意味の動詞です。英語にも「のんびり歩く」という意味でambleという単語が残っています。このambleを名詞として使うと「側対歩」という馬の走り方の種類の名前になります。